自己破産しても車を残したい!車を処分せずに済む方法や注意点、他の債務整理についての紹介

債務整理 2023.12.06
自己破産しても車を残したい!車を処分せずに済む方法や注意点、他の債務整理についての紹介

借金がもう返せない場合、借金救済制度の中でも、自己破産しかない!という方もいると思います。しかし自己破産をしようと思っている方の中には、車を手放すのが嫌で自己破産の手続き依頼するのををためらっているという方もいるのではないでしょうか?

生活や仕事をする上での移動手段として必要不可欠ともいえる車ですが、自己破産では処分の対象となり、手放さなくてはいけません。

しかし、どんな車でも処分されるわけではなく、一定の基準が決められており、処分を免れることができる場合もあります。

特別な事情がある場合なども裁判所から許可がもらえれば、処分されずに済む可能性があります。

自己破産で車を処分される基準や、車が処分されることによって生じる影響、車の処分を回避するための対策や注意点などを解説します。

自己破産で車を処分される基準は?カーローンと査定額が判断材料に!

自己破産では、借金がゼロになる代償として、家や車、預貯金など、さまざまな財産が処分されてしまいます。

原則として、破産者本人の名義の車は処分対象ですが、実は必ずしも処分されるわけではありません。

処分されるのは、以下の2つに該当する場合です。

  • 自動車ローンがまだ残っている場合
  • 査定金額が20万円以上の場合

ローンが残っている車は没収される

自己破産では自動車ローンも破産手続きの対象に含まれます。まだローンを払い終えていない車を持っている場合、車は本人名義ではなく、「所有権留保」という状態になっています。

ローン完済までローン会社(信販会社)が所有権を持つ契約は「所有権留保契約」と呼ばれ、この契約が結ばれているときの車の持ち主はローン会社です。

ローン会社にとっては自分のものが返ってくるのは当然のことで、自己破産を申し立てれば、ローン会社は問答無用で回収していきます。

弁護士が受任通知を送付したタイミングで、回収の話は進んでいき、レッカー車などの手配が整い次第、引き上げられます。

引き上げの時期はローン会社によって異なりますが、遅くなると担保価値が下がってしまうこともあり、早急に回収されることもあります。弁護士に相談すれば、ローン会社と交渉してくれ、引き上げ時期の猶予をもらえる場合もあります。

査定金額が20万円以上の車は没収される

車の査定金額が20万円以上の場合は、裁判所によって没収されます。

20万円が基準となるのは、手続きにコストがかかるためです。20万円未満だと換価処分しても債権者に分配できるお金がほとんど残らなくなってしまいます。

また、車の法定耐用年数は、初年度登録から、普通自動車が6年、軽自動車や小型自動車が4年とされています。これらの年数を経過した車は、査定金額が20万円未満になる可能性が高いため、処分されません。

ただし、高級車や希少価値のある車、ハイブリットカーでは、法定耐用年数を超えても査定金額が20万円を超え、処分の対象になることもあります。

ネットでの中古車査定の結果を参考にしたり、中古車販売店で確認してもらったりして、今の車にどれくらいの価値があるのか、査定金額をあらかじめ調べておきましょう。

以上のことから、自己破産しても、ローンが残っていなくて査定金額が20万円未満の車なら手元に残せるということです。

他にも例外として車を手元に残せる場合があります。

査定金額が20万円以上でも没収されない例外も!自由財産の拡張とは?

自己破産では、自由財産として取り扱う範囲を広げる「自由財産の拡張」というものがあります。裁判所から許可が下りれば、特別に処分の対象から外してもらえる制度です。

「自由財産」とは、以下のようなものです。

99万円以下の現金 99万円までの現金(銀行等での預貯金は含まない)
差押禁止財産 衣服や家具、1ヵ月分の食料など生活必需品
新得財産 自己破産手続きの開始決定後に新たに得た財産
破産管財人が破産財団から
放棄した財産
容易に換価処分できないもの
(処分費用が高かったり、買い手がつかないものなど)
自由財産の拡張がなされた財産 裁判所の許可があれば、自由財産となるものがある

これらは、自己破産しても守れる財産です。自由財産の拡張許可が下りるのは、それほど多くはありませんが、

  • 99万円以下の現金を所持していない場合
  • 身体に障害があり、車がないと生活できない場合
  • 親の介護や通院のために車が必要な場合

といったケースでは許可が下りる可能性が高いです。

判断は裁判所によりけりですが、所持している現金が少ない場合は車も自由財産の範囲内と認められることが多く、要介護者の送迎などで使う場合も許可が下りやすいです。

自由財産の拡張を認めてもらうには、破産手続の開始が決定してから1ヶ月以内に裁判所に「自由財産の拡張申し立て」を行っておく必要があります。

自己破産の手続きで車を処分されるとどんな影響がある?

自己破産で車を処分されてしまった場合、移動手段を奪われて日常生活に支障が出るだけでなく、将来的にもさまざまな影響が生じます。具体的にどのような影響が出るのかまとめました。

ブラックになるため、自動車ローンや車検ローンが組めなくなる

自己破産すると、事故情報が信用情報機関に登録されます。約10年間、いわゆるブラックリストに載った状態で、その期間中は新たな借入はできず、ローンも組めません。

【信用情報機関】

  • JICC(株式会社日本信用情報機構):主に消費者金融会社で組織されている
  • CIC(株式会社シー・アイ・シー):主にカード会社や信販会社で組織されている
  • KSC(全国銀行個人信用情報センター):主に銀行や信用金庫で組織されている

新しく車を買おうと自動車ローンの申請をしても、自己破産すると返済能力が低いを判断され、審査に落ちてしまうのです。購入するなら現金で一括払いしなくてはなりません。

永久にローンが組めないわけではなく、信用情報機関から記録が抹消されれば、ローンはまた組めるようになります。まだ記録されているか抹消されているかは、信用情報機関に開示請求を行うことで確認できます。

必ず、登録が抹消されていることを確認してからローン審査を受けましょう。自動車ローンに通りやすいといわれている3月や9月の決算の時期を狙えば、審査に通る可能性が高まります。

自己破産後、少しでも早く車のローンを組みたい方は、審査に通りやすくするために、他のローンをむやみに申請しない、頭金を多く準備しておくことも心がけましょう。

ブラックリストに載っている人でも購入できることを謳い文句にしているお店には注意しましょう。銀行系ローンではなく、自社ローンなら審査に通りやすいですが、金利手数料が高かったり連帯保証人をつける必要があったりする場合が多いです。

クレジットカードだけでなく、付随のETCカードが使えなくなる!ETCパーソナルカードであれば使用可

信用情報機関に登録されると、新たにクレジットカードが作れなくなり、現在所持しているクレジットカードの利用も制限されてしまいます。

今使っているETCカードの期限が切れても、更新できなくなり、利用が制限されるでしょう。

ただし、「ETCパーソナルカード」というデポジット付きのカードは利用できます。申し込み時に保証金を入金することによってETCカードとして使えるシステムで、クレジットカードとは異なるため、使っても問題ありません。

このように、自己破産するとさまざまな影響が生じますが、運転免許がはく奪されることはありません。自動車ローンは組めなくても、自己破産後に安価な中古車を購入するなどして、再び運転はできるので安心してください。

要注意!自己破産の手続きで車を残したくてもやってはいけないこと

自己破産しても車を残したいと思う方は多いでしょう。なんとか車を残そうとして、法律で禁止されている行為をしてしまう人もいます。自己破産において、やってはいけないことを4つ紹介します。

①自己破産直前の名義変更は慎重に!「財産隠し」と判断されれば免責が認められない可能性が!

自己破産では、破産者本人以外の名義の車は処分されません。かといって、自己破産前に配偶者の名義に変えるなど、名義変更をすると「財産隠し」と見なされることがあります。

自己破産直前の財産の移動は、意図的に財産を隠したと捉えられ、免責が認められない(自己破産が失敗に終わる)可能性があります。

自己破産に失敗して借金がゼロにならないだけでなく、詐欺破産罪として問われ、1,000万円以下の罰金か10年以下の懲役のどちらか、または両方が科される可能性もあるため、注意が必要です。

また、カーナビを取り外すのも財産隠しにあたります。車とカーナビを合わせて1つの財産となるため、勝手に取り外してはいけません。

名義変更するなら買取という形で、家族や親戚などに買い取ってもらいましょう。

車を相場価格で買い取ってもらった後の名義変更は違法とならないためです。同意を得れば、買い取ってもらった車を借りることで、車を維持できます。

ただし、手続きは少々面倒で、方法を間違えれば財産隠しと見なされてしまうリスクがあります。どうしても名義を変更したい場合は、勝手にせず、弁護士に相談してから行いましょう。

②車を残したいからと、車のローンだけを優先して返済してはダメ!

車を手元に残したいがために、自己破産しても車のローンだけは継続して払い続けたいと思う人もいるでしょう。しかし、複数の債権者がいるにも関わらず、一部の債権者だけに弁済する行為は、免責不許可事由に該当してしまいます。

自己破産するにあたって大切なのは、債権者に対して公平であることです。法律上のルールとして、債権者は皆平等に扱わなければならず、車のローンだけ特別扱いはできません。

特定の債権者だけを優先して返済するのは「偏波弁済」と呼ばれ、禁止されている行為です。あと少しでローンが終わる場合であっても危険です。勝手に返済せず、専門家に相談してから対応しましょう。

車のローンがあることを隠して自己破産する「虚偽申告」も詐欺行為で犯罪とみなされるため、必ず申告しましょう。

家族が協力してくれるなら、「第三者弁済」をおすすめします。

第三者弁済は、親や親戚など第三者の協力を得て、ローンを代わりに返済してもらう方法です。第三者に肩代わりしてもらうのではなく、あくまで「援助」という形で、一括で返済できる場合のみ有効です。

第三者の同意を得るのはなかなか難しいですが、ローンが残り少ない場合など、援助が期待できれば車を手放さずに済みます。第三者に支払ってもらえば、車のローンだけ優先的に返済したと見なされることはなくなります。

③処分が決まったら車に乗らない!勝手に処分したり売るのもNG

自己破産手続きにおいて車が処分されると決まったら、もう運転してはいけません。引き上げられるまで債権者のために適切に管理し、丁寧に扱わなければならず、使用も制限されます。

わざと事故を起こして廃車にしたり、安くで売ったりするなど、車を勝手に処分するのも禁止です。

④売却するなら相当な対価で、売却金は使わず残しておかなければならない

車を売却する場合は相当な対価で売る必要があります。そして、売却金は破産管財人に渡し、債権者に分配するなら何の問題もありませんが、使い込んでしまった場合は、債権者の利益を害する行為になってしまいます。

売却するなら必ず自己破産時まで手元に残しておきましょう。勝手に売却せず、専門家に相談した上で売却することが望ましいです。

借金減額したいけどどうしても車を残したいのであれば、自己破産以外の方法も検討してみて!

例外として車を残せるケースがあるものの、仕事を理由に車を残すことが認められることはまずありません。対策として挙げられるのは、自己破産以外の方法で借金の解決を試みるか、あきらめてもう一度車を購入するかです。

自己破産以外の債務整理の手続きには、任意整理や個人再生という方法があります。

収入任意整理で解決できないか検討してみる

「債務整理=自己破産」と思いがちですが、債務整理には自己破産以外にも「任意整理」という手続きがあります。できれば自己破産せずに借金を解決したいと思っている方は、任意整理で解決できないか専門家に相談してみましょう。

任意整理は、弁護士や司法書士が債権者と直接交渉して借金を減額する方法です。自己破産のように借金をゼロにすることはできませんが、利息カットで借金減額できないかを交渉します。また、借金全てを整理するのではなく、どの借金を整理するかを自由に選択できるメリットがあります。

自動車ローン以外の借金を選択して任意整理することで、車を手放さずに済むでしょう。任意整理は自己破産のように裁判所を介す必要がなく手続きも簡易的で、生活への影響も少ないため、債務整理の中で最も利用者の多い方法です。ローンが終わっている車であれば、そのまま車を残すこともできます。財産の没収はされません。

任意整理では元金はそのままですが、利息は減免され、返済期間も3~5年に伸ばせます。減額後の借金を毎月返済できる見込みがあるなら、任意整理で解決することによって車を残せます。

返済できる見込みがないのに無理をして任意整理するのは危険ですし、そもそも返済見込みがない場合は任意整理ができない可能性が高いです。返済払えなかった場合、借金が振り出しに戻って再び債務整理して車を失うかもしれません。自己判断せず、必ず専門家に相談して判断を仰ぎましょう。

ローンを完済している場合は個人再生を検討してみる

債務整理のもう一つの手続きに個人再生があります。住宅ローンを返済しながら借金を大幅に減額できるメリットの大きい方法ですが、車を残したい場合、自動車ローンを完済していることが条件です。

自動車ローンが残っている場合は前述したようにローン会社に回収されますが、完済していれば、個人再生をしても車は処分されません。

個人再生は将来的に収入が安定していることや借金の総額が5,000万円以下であることが利用条件です。自己破産のように借金がゼロにはなりませんが、車を残す手段の一つとして、弁護士に相談した上で検討してみてください。

お金を貯めてもう一度車を購入する

今の車は処分されても、自己破産後に一括で別の車を購入することはできます。自動車ローンや車検ローンは組めないため、お金を貯めて一括で購入しなくてはなりませんが、自己破産手続き中は車を買うことを目標に、貯金を習慣づけましょう。

手持ちのお金だけでは足りない場合、自己破産の免責後に利用できる「福祉資金貸付」という公的な貸付を利用できる可能性があります。お住まいの地域の社会福祉協議会で相談してみてください。

また、自分の車を持たなくても、家族名義の車を貸してもらったり、レンタカーやカーシェアリングサービスを利用したりすることもできます。

借金問題は早めに専門家へ相談を

自己破産したいけれど車を手放したくない、だからといって借金問題を放置すると深刻な状況になりかねません。借金問題は弁護士や司法書士への相談が早ければ早いほど、債務整理での選択肢も広がります。

任意整理で解決できれば車を残せますが、相談が遅れて借金の状況が深刻化し、自己破産しか選択できない状態になってしまうと車を残せる可能性はどうしても低くなってしまいます。

法律事務所や司法書士事務所では、借金に関する相談を無料で行っているところが多々あります。返済が厳しいと感じた時点ですぐ相談し、手遅れにならないよう適切な行動をとりましょう。

>